2.3 剛体分子の定温シンプレクティック分子動力学法の開発と水分子への応用

シンプレクティック分子動力学法と総称される手法では長時間シミュレーションを実行してもハミルトニアンの誤差が生じません.しかしこれまで水などの分子を剛体として扱う場合,温度を一定に保ちながらシンプレクティック分子動力学シミュレーションを行うことはできませんでした.

我々は能勢・ポアンカレ熱浴を使うことにより,温度を一定に保ちながら剛体分子のシンプレクティック分子動力学シミュレーションをおこなう手法を提案しました.例えば水分子にこの手法を用いると時間刻み幅を4 fsに設定してもハミルトニアンはよく保存します.従来の能勢・ポアンカレ熱浴を用いたアルゴリズムでは時間刻み幅を0.5‐2 fs程度に設定しなければ以下ませんでしたが,この新しい手法を使えば時間刻み幅をより長く設定でき,高速かつ安定にシミュレーションをおこなえます.本手法はタンパク質や水分子の分子動力学シミュレーションを高速化するために有効な手法です.

図1 ハミルトニアンの初期値からのずれδH(t)の時間変化.(a) 能勢・ポアンカレ熱浴,(b) 能勢・フーバー熱浴.

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