1.1 分子動力学シミュレーションとは?

分子動力学シミュレーションとはコンピューター上で仮想的に原子や分子を配置し,その運動を調べる手法です

まず初期条件として右図のように原子の座標r1, r2, r3, …,rNと運動量p1, p2, p3, …,pNを設定します.原子の座標が決まると各原子間の距離など相対的な位置が決まりますので各原子に働く力が計算できます.質量miの原子iに働く力をFiとするとニュートンの運動方程式
Fi = mi ai
から各原子の加速度aiがわかります.この加速度aiだけ速度を変化させながら座標を少しずつ変えていくことにより原子を動かすことができます.

実際の分子動力学シミュレーションでは実験と比較するために温度や圧力を一定に保つことが多いです.そのためには上述のニュートンの運動方程式を書き換えて,運動エネルギーや体積を制御することにより温度一定のカノニカルアンサンブル(NVTアンサンブル)や温度と圧力が一定の定温定圧アンサンブル(NPTアンサンブル)でシミュレーションを行います.詳しくは以下の参考文献を参照してください.

参考文献
奥村久士
分子シミュレーション研究会会誌 アンサンブル
連載解説「分子動力学シミュレーションにおける温度・圧力制御」
「第1回:能勢の熱浴と能勢・フーバー熱浴」 10 No.4 (通巻44号) (2008) 29-33.
「第2回:シンプレクティック解法と能勢・ポアンカレ熱浴」 11 No.1 (通巻45号) (2009) 35-40.
「第3回:速度スケーリング法,ガウス束縛法,ベレンゼン熱浴」 11 No.2 (通巻46号) (2009) 43-46.
「第4回:アンダーセンの方法と能勢・アンダーセンの方法」 11 No.3 (通巻47号) (2009) 22-26.
「第5回:パリネロ・ラーマンの方法,圧力一定のガウス束縛法,圧力一定のベレンゼンの方法」 11 No.4 (通巻48号) (2009) 26-30.

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